ここは湯浅町立山田小学校。少子化のため4・5・6年生の合同学級となった教室で、年間を通じて「しょうゆづくり体験学習」の授業が行われています。
今日の授業の先生は、湯浅醤油有限会社社長の新古敏朗さん。新古さんは子供達でも理解できるよう、言葉を選びながら語りかけます。
「いまこのペットボトルの中で何が起こっているか。今日はそれをみんなで勉強しましょう。」
この学校では総合学習の一環として食育授業を行っています。まず4年生になるとしょうゆの原料となる大豆を畑で育てるため、草ひきや苗植えをおこなって土と親しみ、秋の収穫時は枝豆として食したりしてみんなで作業を行います。そしていよいよ3学期にはしょうゆづくり。
新古さんが用意してくれた麹や天然塩を自分のペットボトルにもろみを仕込み、そこから自分でペットボトルを振って撹拌、1年間熟成させて5年生の3学期にもろみを搾って「マイしょうゆ」の完成という訳です。
ペットボトルは新古さんのアイデアで、子供達にしょうゆづくりを教えるために「できるだけ身近なものを利用したかったから。」
小さな職人達はそれぞれのペットボトルにしょうゆを仕込み、愛情込めて毎日撹拌し、1年かけて育てるのです。
「できたしょうゆを、お父さんやお母さんはどんな顔して食べるんだろう。と考えるとすごく楽しいですね。」醤油発祥の地だということを、手で触って実感して欲しい。と新古さんは言います。

「私にとって醤油づくりは、家業にのみにあらず、湯浅に残して行かねばならない大切な産業だと思っています。」と新古さん。
「日本の食文化を支えてきた味噌や醤油が生まれた町だからずっと大事にしていきたい。その気持ちを子供たちにも伝えていきたいんです。」
湯浅町は金山寺味噌と醤油発祥の地です。醤油の直接の起源とされている金山寺味噌(径山寺味噌)は、鎌倉時代に隣の由良町にある興国寺の開祖法燈円明國師(覚心)が中国で製法を習得、適した水が湧くこの地に伝えました。それ以来、750年にわたり金山寺味噌は変わらぬ手作りの加工法で造られています。
当初の金山寺味噌は水分が多くびっしょりとしたものだったようですが、樽底に沈澱した液汁が美味しかったことから、これを「たまり(むらさき)」として調味料に用いたのが醤油の始まりなんだとか。

湯浅醤油有限会社は国道42号線沿いにあり、敷地内には観光客向けの見学コースを用意。休日には多くのお客様が観光バスで訪れ賑わいます。
100年を経てなお現役の醤油樽を置いている見学工場の九曜蔵では、作業工程ほか原料の豆の展示や醤油のできるまでの図解などが行われており、蔵人さんのガイドで醤油についてのお話が聞けます。
また敷地内には親会社の丸新本家の販売店・工場があり、昔ながらの金山寺味噌や梅干し、漬け物などを販売。ご家庭で金山寺味噌を作られる方が少なくなった今でも、地元の方が毎日買いに来られるぐらい、その安定した製品のファンが多いのだそう。
お客様の嗜好に合わせて多種多様の製品を製造している湯浅醤油ですが、中でも特にこだわっている醤油といえば「食品のオリンピック」と呼ばれるモンドセレクション最高金賞を連続受賞中の「金山寺たまり 九曜むらさき」と「生一本黒豆醤油」でしょう。
その「金山寺たまり 九曜むらさき」は、醤油の起源にさかのぼって「たまり」を現代に再現した唯一の製品。金山寺味噌と醤油製造の技術を持つ会社ならではの「金山寺たまり 九曜むらさき」は、金山寺味噌の原料である野菜のエキスと旨みが風味豊かな味わい。素材の持ち味を引き立てるとお客様の評判です。
新古さんは先代より受け継いだ「もの創りに対して真面目に・本物を創る」を信条とし、無添加で偽りのない本物の醤油づくりに取り組んできました。
その新古さんが情熱を注いだのが「生一本黒豆醤油」。丹波篠山の最高級黒豆を使い、古式製法で作った黒豆醤油は、テレビや多くのメディアで紹介され、多くの料理人やシェフ達が絶賛した逸品です。
さらに驚くのはヨーロッパ内の三つ星ミシュランシェフ達までもがこの醤油を愛用していること。なんでも国際便のフライトアテンダントが買った「生一本黒豆醤油」を知人のシェフに渡したところ、後味が良く素材を引き立てる。と絶賛。その品質・味に皆惚れ込んでしまい、今はシェフ同士で取り合いをするほどの人なのだそうです。
本物の食に対するこだわりが職人としての共感を呼んだのでしょうか。今ではシェフ達に醤油造りの現場を案内したり、ヨーロッパに招かれたりと、互いの交流を深めるまでになりました。
「彼らは日本の食材や調味料に、日本とは全く違うアレンジを施します。より良い食材を求める探求心や、とにかく手間をかけて、独創性のある料理を生み出す姿勢に刺激を受けました。」
また、「日本人でも醤油の原料を知る人は少ない中、食の本場、ヨーロッパで私たちの製品が使われることでもう一度醤油を見つめ直してもらう機会ができればいい。そう考えています。」と新古さん。
「生一本黒豆醤油」は「金山寺たまり 九曜むらさき」とともに、2005年からモンドセレクションに連続受賞しており、2008年には国際優秀品質賞を受賞。ほかにもベルギーの優秀味覚賞(ITQI)受賞など、まさに湯浅醤油が海を越え、新古さんの情熱が世界にみとめられた至高の醤油なのです。

ですが、新古さんの「ものづくり」はとどまる気配を見せません。品質に改良すべき点はないか。素材を変えてみてはどうか。など、お客様の声に耳を傾け常に良い醤油を求めて新製品の開発にいそしみ、大豆のかすより作った「手作り大豆石鹸」などのゼロエミッションの取り組みなど余念がありません。
「負けず嫌いなんですよ。無理だと言われれば闘志がわいてくるし、チャレンジしたくなる」といたずらっ子ぽく笑います。
その子供の目線から生まれたのかも。が業界初の「カレー醤油」。
「僕は小さい頃からカレーが大好物なんですが、ある時カレー向けの醤油が作れないだろうかと考えたんです。」
ご自身が"カレーに醤油をかける派"だという新古さん。でも人前でかけるのは恥ずかしいという人のために、堂々とテーブルに置いておける専用の醤油があればきっと使うはずだ。と、市販のレトルトカレーはもちろん、出張などで訪れたカレーショップ巡りをするなど入念に調査し開発。およそ3年の月日をかけて完成したのが業界初の「洋食屋さんのカレー醤油」です。
杉樽仕込みの天然物を贅沢にブレンドした醤油にターメリックなど6種類のスパイスを調合。単なる思いつきではなく、遊び心と職人のこだわりが詰め込まれたカレー醤油に仕上がりました。
カレー以外にも牡蠣フライやチャーハンに使ったり熱々のコロッケにかけたり、鶏の唐揚げの下地に使ったりとアイデア次第でみんなが大好きなカレー風味のレシピを楽しむことができます。
経営者であり、しょうゆづくりの授業では先生。そしてカレー醤油のような新製品を開発する熱い職人の心。どの立場でも正面から物事に向き合う新古さんは、「製品への思い」をどうやって伝えるかを考え、「おもてなし」の方法を探しています。
見学者向けに蔵を移築したことも、貴重な製品である醤油の試飲をさせてくれているのも、お客様に醤油をもっと知って欲しいと言う気持ちからなのです。
九曜蔵の横に記念撮影用のパネルがあります。そう、観光地でよく見かける「顔だけ出す」あれ。
新古さんに聞いてみたところ、「ちょっと恥ずかしいかなと思ったんですけど、少しでもお客さんの思い出づくりのお手伝いができるのならと思って。」と教えてくれました。
単なる販売のための方法ではなく、お客様のことを考えてサービスをおこなう。新古さんだからこそできる、おもてなしの現れなのでしょう。
心からのおもてなしも、安定した真面目なものづくりも、どちらも容易ではありません。ですが新古さんは「質を追求し続ける職人でありたい。と同時に産業を地域に根付かせる活動をしていきたい。」ときっぱり。
「この町で生まれた醤油をみんなに知って欲しい。金山寺味噌を伝えて欲しい。そしてこんなにすごい町、湯浅で生まれたことを誇りに思い、湯浅にいつでも帰ってこられるように、湯浅人の私も、がんばって本物の醤油づくりを行っていきます。」
伝統を守り、湯浅の未来を考えてものづくりをする新古さんは、温故知新という言葉そのままの、故きを温ねて新しきを知る。職人なのです。
酒醸造や酢醸造、そして醤油の醸造では「醸(かも)す」という言葉がよく使われます。「発酵させる」や「醸造する」と言った意味ですが、醸造の現場以外ではあまり聞かない言葉でしょう。
醤油にも、お酒もお酢にも使われる麹は、熟成や発酵を伴う生き物。ですから醸すという言葉には、「よく育ってくれよ」とか「がんばってくれよ」などと言った、生き物を育む気持ちや慈しむ気持ちが込められ、さらに作り手と元来の製法を守る姿勢、麹やもろみ、食材がすべて一体化した製品作りの意味が含まれているように感じました。
湯浅で作る湯浅醤油だからこそ製法にこだわり、いつまでも伝えていきたい醤油づくり。そこから生まれるカレー醤油などの新しい味覚の開発。そしてしょうゆの食育授業を通じて地域づくりをおこなう新古さんは、ものづくりを通じて湯浅を「醸そう」としています。
※各種ギフトセットも承ります
新古さんからひと言
湯浅の企業として、醤油という湯浅を代表する製品づくりをしていることに対し、おもしろさと同時に責任を感じつつ、真面目に日々製造をおこなっています。当社の製品は原料・製法にこだわっています。湯浅へお越しの際はぜひお立ち寄りください。なお、蔵見学は0737-62-2100まで。
※掲載の商品はすべて取材時点のものです。

重要伝統的建造物群保存地区の立石(たていし)の道標

伝建地区の立石茶屋

伝建地区の麹屋

湯浅駅前の紀伊国屋文左衛門像

金山寺味噌、湯浅醤油発祥の源となった山田の水

山田川沿いの生徒たちの栽培地

最上の丹波黒豆と五島灘の塩を使用、120年ものの杉樽で天然醸造した逸品。
生一本黒豆(200ml)1,000円
(720ml) 3,000円

醤油の元祖である「金山寺たまり」を使用した野菜のエキスたっぷりの濃い口醤油。
九曜むらさき(塩分13%)
(200ml)470円
(500ml)1,050円
(720ml)1,260円

最高級国産丸大豆と五島灘の塩を使用。杉樽で天然醸造した醤油です。
蔵匠 樽仕込み(塩分16%)
(200ml) 420円
(720ml) 1,050円

今まで存在しなかった新感覚調味料。スパイスが食欲を促し、後口に余韻を醤油の風味が加わります。
洋食屋さんのカレー醤油
(塩分13.5%・150ml)
420円

旨み成分が多く素材はそのままに味付けできます。
湯浅白醤油白搾り
(200ml)420円

美味しいと大好評!そうめんや冷しゃぶなど用途も色々。
濃縮 柚子梅つゆ(200ml)500円

湯浅醤油使用の美味しいポン酢
ゆずぽん酢(500ml)940円

国産原料使用・無添加
うす塩味金山寺味噌(270g) 760円

丹波黒豆を贅沢に使用
黒豆じゃん(145g)470円

ゼロエミッションへの挑戦!
無添加でやさしい大豆手づくり石鹸(130g)750円